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竹田ランチェスター45歳からの戦略

心から売りたいと思わねば売れない!

心から売りたいと思わねば売れない!

「わかりました。有難う御座います」
そう言って私は電話を静かに置いた。この瞬間を境に自分自身がこれほど変わるなど誰が予測できただろう。

その日は、朝からすごい雨だった。ワイパーを最強にしても2メートル先が見えない。私は営業所で「ああ、こんなひどい雨なら今日も受注なしやな。こんなときに売れるヤツはいない。ひとつ言い訳ができたな」私は心の中でほんの束の間の安息を得ていた。そこに一本の電話が入った。所長宛だ。どうやら営業員と話しているようだ。私は辺りを見回した。みんないるようだ。誰や?
ところが次の所長に一言に私は愕然とした。
「林田セールス、1台決まり!」
「げぇ~、なんちゅうことするんや!。俺なんか営業に代わって3ヶ月。売れた車はたった2台しかも1台は自分の車。」
私が33歳で営業に代わって3ヶ月目の11月、日曜日の朝の出来事である。
私は次の瞬間「俺も、こんなセールスになりたい」
そう思うと、そしてなぜか。「今しかない!まさに大雨が降っている今日がチャンス」と思えた。

「今しかない!」そう思った私は、今まで訪問したお客様の顔を一人一人思い出した。
走馬灯のように脳裏に浮かぶ。
そしてついにこの人しかいない。もう2度3度返事をもらえなかった。愛田さんしかない。そう思った。
私は、大雨のなか車を走らせ愛田さん宅に向かった。
到着は、丁度昼時。こんにちは。っと玄関を開ける。
ご主人は見えた。よくよく考えたら、こんな大雨の日に外に出て行く馬鹿はよほどのヤツ。普通の人なら家にいる。
私は、玄関で立ったままだった。それもそのはず靴は水びたし、上がれる状況ではなかった。

愛田 「まあ、上がったら」
私  「失礼します」
愛田 「・・・・・」
私  「のど自慢ですか・・・」
もう車のことは全て話し、何も話すことがなかった。
それから私は何も話さず、じっとテレビを見ていた。
その間全く時間は気にならかった。不思議なことに買ったほしいという気持ちも起こらず、ただ一緒に時間を過ごした。
奥さん「もうぼつぼつ決めた上げたら・・・」
「今しかない。」と思った私は、頭の中でこれまでに訪問したお客の顔をめぐらせた。走馬灯のようにお客の顔が現れては消え、消えては現れ、そして決めた。
「愛田さんのところへ行こう!」今の私が売れるとしたらここしかない。そのお客様は、テリトリを毎日回っていてやっと見つけたお客様だ。
営業所にも着てもらい、マネージャーにも、先輩にも同行してもらったが、結局OKは頂けなかった。
兎に角私は、車に乗りお客様宅に向かった。着いたのは12:00過ぎ、私は昼時であろうがなかろうが、全く考える余裕もなかった。ドアをノックし、「こんにちは」愛田さんは、九州から出てきて夫婦2人暮らしで、非常に無口な方だ。
愛田 「こんな雨の中、上がったら・・・・」
私  「失礼します」
ご主人は、NHKの番組をじっと見ている。
私  「・・・・・・のど自慢ですか?」
今までの訪問で、既に話すべきことは、全て話した。
私は、車のことなど全く話すことはない。私は、ただじっとしていた。夕方近くになり、
奥 「もうそろそろ決めてあげたら・・・・」
その言葉で、「ひょっとしたら」という思いがよぎった。
愛田さん「じゃあ、計算して・・・」
私は早速費用の計算を始めた。もう何度もやっているので間違いない。
そして、下取り金額の希望を聞きだし、所長に電話をかける。
かなりの値引きだが、絶対OKがでると信じていた。
私 「愛田さんのところにお邪魔してます。」
所長「愛田さんって、何回も断られているとこか。何しとんのや」
私 「何しとるって。車の商談や!」心の中で叫んだ。
私 「○○という車種で、○○円の下取りをご希望です。よろしいでしょうか」
所長「えらい値引きやのう。しゃあない。取って来い!」
私は、ほくそえんだ。気持ちをぐっと抑え、注文書を書き直し、サインをしてもらう。
そして書類を整備し「有難う御座いました」
愛田さんの家を出て時計を見ると、なんと夜の7時
「やったあ!」初めて自分の力で売った。

私がもしあの瞬間、どんなことをしてでも売りたいという気持ちが起こらなかったら、どうであっただろう。
今にして思えば、なんと言う汚い売り方だろうか。
こんなセールスからは絶対買いたくない。
しかし、物事が動き出すためにはこのような多大なるエネルギーが必要になる。
才能のない私は、この方法で窮地を脱した。

このどんなことをしてでもという気持ちは、今でも窮地に立たされると絶対に忘れることはない。

鉄則1、心から売りたいと思え

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